食用可能なふぐの分類

厚生労働省が食用として認可しているふぐは22種類存在しますが、 市場で主に流通するのは数種類に限られます。 それぞれに独特の味わいと特徴があり、料理法も異なります。

22 食用認可種類
6 主要流通品種
3 可食部位(種類により)
2016 GI「下関ふく」登録

とらふぐ(虎河豚)- ふぐの王様

新鮮なとらふぐ

最高級品種としての地位

ふぐの王様とされる最高級品種で、冬季の天然物は特に高値で取引されます。 肉質の繊維が細かく、上品な甘みが特徴で、刺身、鍋、唐揚げすべてに適する万能品種です。

とらふぐの特徴

外観と特徴

体表に虎のような黒い縞模様があることから「とらふぐ」と呼ばれます。 膨らんだ時の白い腹部と背中の模様のコントラストが美しく、 見た目からも高級感が伝わります。

可食部位と価格

可食部位:筋肉、皮、精巣
価格帯:1匹数万円(天然大型)
最適な調理法:てっさ、てっちり、唐揚げ
旬の時期:12月〜2月

まふぐ(真河豚)- ふぐの女王

まふぐの群れ

とらふぐに次ぐ人気品種

「ふぐの女王」と呼ばれ、とらふぐに次ぐ人気を誇る高級品種です。 山口県萩市ではブランド化も推進されており、 とらふぐより脂が乗り、濃厚な味わいが特徴です。

まふぐの詳細

関西地方で特に高評価

関西地方で特に高い評価を受けており、大阪や京都の高級料亭でも よく使用されます。身に程よい歯ごたえがあり、 鍋料理では特に美味しいダシが出ることで知られています。

特徴と詳細情報

可食部位:筋肉、皮
体色:茶褐色の地に白い斑点
最適な調理法:てっちり、てっさ
産地:瀬戸内海、有明海
特徴:濃厚な旨味、コクのある味

その他の主要品種

くさふぐ(草河豚)

特徴:小型で庶民的な価格
可食部位:筋肉のみ
調理法:唐揚げ、煮付け
流通:関東地方で人気
小さいながらも美味しく、手頃な価格で楽しめる品種です。

ひがんふぐ(彼岸河豚)

特徴:春の彼岸頃に漁獲
可食部位:筋肉、皮
調理法:鍋物、刺身
産地:瀬戸内海
春先に美味しくなることから「彼岸ふぐ」と呼ばれます。

しょうさいふぐ(潮際河豚)

特徴:沿岸部で漁獲される小型種
可食部位:筋肉
調理法:味噌汁、煮付け
地域性:主に関東地方
地域色豊かな品種で、郷土料理としても親しまれています。

かなふぐ(金河豚)

特徴:金色がかった体色
可食部位:筋肉、皮
調理法:鍋物、刺身
希少性:やや希少な品種
美しい体色を持つ品種で、料理の見た目も華やかになります。

ごまふぐ(胡麻河豚)

特徴:胡麻のような小さな斑点
可食部位:筋肉、皮
調理法:鍋物、刺身
産地:日本海側
繊細な斑点模様が美しい品種です。

しまふぐ(縞河豚)

特徴:縞模様が特徴的
可食部位:筋肉
調理法:鍋物中心
流通量:限定的
独特の縞模様を持つ、比較的希少な品種です。

品質の見分け方

新鮮で高品質なふぐを見分けるポイント

ふぐの品質を見分けるには、目の透明度、体表の色艶、弾力性などを 総合的に判断する必要があります。経験豊富な職人の目利きが重要です。

目の透明度

新鮮なふぐの目は透明で澄んでいます。 濁りがあったり、白っぽくなっているものは 鮮度が落ちている可能性があります。

体表の色艶

体表に自然な光沢があり、色が鮮やかなものが良品です。 くすんでいたり、ぬめりが異常に多いものは避けましょう。

弾力性とハリ

指で軽く押した時に弾力があり、すぐに元に戻るものが新鮮です。 へこんだまま戻らないものは鮮度が落ちています。

エラの色

新鮮なふぐのエラは鮮やかな赤色をしています。 黒ずんでいたり、茶色く変色しているものは 時間が経っている証拠です。

地理的表示(GI)「下関ふく」

国が認めた本場の証明

2016年に地理的表示(GI)「下関ふく」が登録され、 国からも正式に"本場"として認められました。 この認定により、品質保証とブランド保護が確立されています。

GI認定下関ふく

厳格な品質基準

GI認定を受けるためには、下関市内での処理、 特定の品種(主にとらふぐ、まふぐ)、 伝統的な処理技術など、厳格な基準をクリアする必要があります。

伝統技術の継承

下関で400年以上培われてきた伝統的な処理技術や 調理法を継承することも認定の条件。 単なる地域ブランドを超えた文化的価値が認められています。

消費者への品質保証

GIマークが付いた「下関ふく」は、 品質、安全性、伝統性のすべてが保証された証明。 消費者は安心して本物の下関ふくを楽しむことができます。

天然と養殖の違い

天然ふぐの特徴

味わい:野生の力強い旨味
食感:しっかりとした歯ごたえ
価格:高価(希少性による)
旬:冬季(12月〜2月)
自然環境で育った天然物は、複雑で深い味わいが特徴です。

養殖ふぐの特徴

味わい:上品でクリーンな味
食感:柔らかく食べやすい
価格:比較的手頃
供給:年間を通じて安定
管理された環境で育てられ、品質が安定しています。

用途による使い分け

天然:特別な日の会席料理
養殖:日常的な鍋料理や刺身
それぞれに適した料理法があり、 用途に応じて使い分けることで、 より美味しくふぐを楽しむことができます。